箱の中から視た世界-1-
打ち付ける雨音だけが僕を慰めてくれた。
もうずっと家に帰っていなくて、行く当てもない。
何日も何日も違う景色の中を彷徨っている。
家を飛び出してきたので、当然お金なんて一銭も持っていない。
何が原因で家を飛び出したかなんて今となってはどうでもいい。
ただ許せなかっただけなんだ。あの生活が、そして親が。
激しく打ち付ける雨は止む事を知らないのか強まるばかりで、
慰めているのか、貶しているのか…それも分からなくなってきた。
もしかしたら、泣かない僕の変わりに空がおお泣きしてくれているのか…
そんなずれた考えしか浮かんでこない。
雨は僕の体温を確実に奪っていく。
何も食べていない身体はそれだけでも耐えられなくて、悲鳴をあげる。
いよいよ歩けなくなってきて、道端の壁に背を預けた。
なんだか立っていることさえ出来なくなってきて、ズルズルと腰を折った。
座ってしまえば後は眠気が襲ってくるだけで、面倒な僕は、
眠気と戦う事さえしなかった。
―眠ってしまえば楽になるのだろうか―
死ぬって事は怖い事の筈なのに、今は全然怖くなんかなくて、
ただ好奇心だけが勝っていた。
死んだらどうなるんだろうか
死んだらどこへ行くのだろうか
他にも様々な疑問が頭の中を行きかっている。
それにしてもこの世の中は冷たい。さっきから視線を感じるが、
誰も僕を助けてくれようとする善良な市民は居ないようだ。
日本もとうとう地に堕ちた感じがする。もうずっと前からか…
目の前を通り過ぎるだけの人物を見て思った。
そうか捨てられた猫もこんな感じなのかも知れない。
箱の中に入れられて、出ることも出来ず雨に打たれてか細く鳴くんだ。
なんて寂しい世の中なんだろうか。
いよいよ眠気も最高潮まで来たらしい。うとうとと瞼が重い。
やりたい事だってないし、こんな世界にもう未練なんてない。
そう思って瞼を閉じた。次ぎ起きたときは何処に居るのだろう。
そんな事を思いながら。
+++++
「んっ…んぅ?」
意識が覚醒したとき、そこは暖かい部屋の中で、
尚且つ僕は暖かい布団に包まれていた。
ふわふわと心地よい感覚に僕は包まれていた。
死んでたどり着いた場所はどうやら天国らしい。
今まで頑張った僕に神様は情けをかけてくれたのかも知れない。
「やっと起きたの?君汚いから風呂に入ってくれる?」
「へ?」
そんな事を考えていると頭上から耳に響く綺麗な音が入ってきた。
その音は人間の放つ物で、それでいてまるで音楽のようだった。
少しの間言われた言葉に対して理解が出来なかったのだが、
身体を見回すと泥とか砂とかがついていた。
「え、あ…すみません。」
謝るために顔を上げると、そこには天使の顔があった。
なんて綺麗なんだろう…この綺麗さを現すのに僕は言葉を知らない。
きっとこの世界にはそんな言葉存在しないのだと思う。
髪は黒くてサラサラしている。目も吸い込まれそう色素の薄い黒。
切れ長の瞳に形が良すぎるくらいに整った輪郭。
肌も白くて…例えるなら天使。
「あ、僕やっぱり天国に居るんだ。」
「何?まだ寝ぼけてるの?」
「えぇっと…ここ天国ですよね?」
「(寝ぼけてるんだ)…ここは僕の家。」
「家?えっと…」
「ここは並盛町だよ。君は僕の家の前で倒れてたんだよ。」
えぇっと…並盛町って事は隣町だ。僕黒曜に住んでたし。
なんだ知らない間にちょっと戻ってきてたのか。
それにしても人様の家の前で倒れていたなんて迷惑の他ない。
ここは謝らなければ…
「えっと、助けてくださって有難うございます。そしてごめんなさい。」
「謝るか感謝するかどちらかにしてくれる?咬み殺すよ?」
「咬みっ?えっと…じゃあごめんなさい。」
「やっぱり咬み殺す。」
「えぇ!?」
何でだろう、きちんと謝ったはずなのに何処から出したのか、
トンファーで殴られてしまいました。てか何故トンファー!?
カンフーが好きなのだろうか?綺麗な人はちょっと謎だ。
て…そうじゃない。何で僕殴られなきゃならないんだ?ん?
「あの…なんで僕殴られて…」
「雨に濡れながら道端で鳴いてた哀れな猫を拾ったのは僕だよ。」
「へ?」
「それに、僕の町で死なれちゃ困るからね。」
「はぁ……」
良くわからないけど、とりあえず謝って欲しくなかったのだろうか?
綺麗な人はやっぱり僕にはわからないな。という事で感謝しておこうか。
「えっと、有難うございまし―って痛いです!!」
何でだろう…またトンファーで殴られてしまった。
意味がわからないを通り越してしまいそうですよ。うぅ…痛い。
手加減されているのかな?それが地味に痛いんですけど。
殴るならこう…もっとスパーンと気持ちよく…
「ワォ、君マゾなの?」
「えぇええええっ!?」
くっ…口に出てなかったよね?何で何で????
っは!しかもこの人なんか笑ってますよ…うわぁー
笑顔超絶綺麗!!
「どうでもいいけど、早く風呂に入ってくれる?」
「へ、あ…はい。」
「あがったら餌をあげるから早くしなよ。」
「えさ…」
「そ、今日から君は僕の飼い猫だからね。」
そう言われて物凄く綺麗に微笑まれてしまいましたよ。
どうやら可哀想で哀れな猫は拾われたようです。
それが善良な市民であったかは誰も知る由がなかったのだが……
後書き
続き気になるよね。うん。ということで拍手に続きあり。お風呂お風呂ーvv
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素材:
戦場に猫