目の前に現れたのは俺の愛する人
実際に話したことなんて一度も無い
だけどこの想いだけはどうにも出来ない
早く俺に気付いて
そして俺を
抱きしめて
俺も㋮のつく異界人! -04-
俺が泣き出してから束の間の出来事だ。
俺は今目の前で繰り広げられているこの光景を何と表せばいいのでしょう?
ハイ、俺飛んでます。
そうだ、さっきまで訳分かんなくて泣いてた筈。
なのに今はどうだろう?羽でも生えて自分で飛んでる気分です。
説明すると俺とゆーちゃんが吃驚した骨格標本らしき物に鷲掴みされてます。
高だか骨だというのに、何処に少年一人持ち上げる力があるのだろう?
まぁそんなの大した事ではない。
気になるのは下にいるコンラートとアーダルベルトの会話だ。
俺の見ていた夢では二人は同じ人を好きなんだから険悪なムードは当然。
「お前ほど愛に一途じゃないんでね。」
二人の会話からコンラートがそう言った。どういうことだろう???
夢では…そう、あの優しそうな女の人の事が好きだと思ってたのに。
一途になれるほどの人じゃなかったって事なのかな?よく分からない。
きっと…夢の中の俺は貴方の事好きだったのに…
俺はそんな悲しい事を考えながら、この先どうなるのかと思った。
そもそも此処がどこかも分からない。RPGの世界かもしれないし…
もしかしたら俺は又寝ていて、夢を見ているだけなのかもしれない…
そうこう考えている内にアーダルベルトは去っていった。
去り際に「少しの辛抱だぜ、すぐに助けてやるからなっ!」とか言ってた。
「助けて・・・ってーとおれ等は今、
善悪どっちの組織に連れ去られようとしてるわけ!?」
「…さぁな、でも俺の夢が正しいのなら…悪じゃないよ。」
「へぇ〜、ならいっか。」
俺が笑うとゆーちゃんも優しく笑いかけてくれた。
でもその表情も直ぐに不安なものへと変わり、
何メートルも下にある大地を眺めた。
下ではコンラートと、その部下と思われる人達が話をしている。
陛下の御身がどうのこうの話しているけど…陛下ってだれだ!?
おれ等普通の高校生の筈…なのに目線はおれ達…
どっちかって言うとゆーちゃんに向けられている。何がどうなっているんだ…
「本当に分からない…」
「……とりあえずこの、超よくできている空中ライドから降ろしてくんねーかな。」
「あぁ…もう危険も去ったようだし…降ろして欲しいな。」
俺とゆーちゃんの会話が聞こえたのか、コンラートはニッコリと微笑んだ。
ヤバイ…何だ?その無駄に爽やかな笑顔はさぁ?怒るにも怒れない…
あれか?惚れた弱みってやつなのかな??いや…
あの笑顔はなんでもサラリと流してしまうような気がする…
「あぁ、申し訳ありません。陛下を降ろして差し上げて。」
そう命を出されると、骨格標本はカタカタ言いながら、
俺とゆーちゃんを降ろしてくれた。なんだ…返事なのか!?
この骨格標本は人の言葉が分かるのか!?不思議だ…
地面に降り立つと、コンラートはゆーちゃんの元へと歩み寄って行った。
勿論俺も隣に居る訳だが…そして、ゆーちゃんの手を取り方膝を付いた、
俺なんて眼中にないように、ゆーちゃんだけを真っ直ぐ見つめる。
「陛下、ご無事で良かった。」
そう言って、コンラートはゆーちゃんの掌に口付けをした。
俺は唯呆然とその行動を見ているしか出来なかった。
理由は分かりきっているけど…胸がとても苦しくなった。
チクチクと…俺を攻撃する。
俺は見ていられなくなって、フイッとそっぽを向いた。こんなの悲しすぎる。
「さぁ、陛下少し距離がありますが、移動してもらいます。貴方も…」
「貴方じゃない…だ。」
「ハイ、様。」
「てか…陛下って誰!?俺!?」
「えぇ、貴方ですよ。」
また、コンラートはニッコリと笑って優しい表情をゆーちゃんに向けた。
俺とゆーちゃんに対するこの違いは何なんだろうか?
さっきからゆーちゃんに陛下陛下と…
俺を見るときは何の感情もないように笑いやがって…
気付いて欲しい…俺だって…夢の中の話だけど…
お前の隣に居たんだって…分かって欲しいのに…現実は残酷だ。
俺はいつも、有利に腹を立てる。
でも結局は許してしまうんだ…君の事気に入ってるから。
でも…今回ばかりは…無理なのかもしれない…
最低だと思われようが…有利が悲しもうが…俺はコンラートが好きなんだ。
きっと誰にも負けてないと思うよ?ねぇ…気付いてよ…
俺はそんな感情を抱きながら、前を行くコンラートと有利を見ていた。
とても大切そうに扱って…とても楽しそうに二人で馬に乗っている。
俺といえばコンラートの部下であろう人と相乗りをしている。
何か緊張している様子だ。何で俺なんかに緊張してるのかは分からないが、
話しかけても敬語で返事をするだけ。会話も何も…
こんなんじゃ持たないぜ…俺は軽く落ち込みながら長い道の先を見ていた。
+++++
「陛下!」
馬に乗って約半日が経とうと言う時やっと小さな村が見えて目的地に到着した。
兵達と途中で別れ、村の中央を通り少し大きめな家に差し掛かった。
その扉が何とも勢いよくバンッと開き、彼は飛び出してきたのだ。
そう超絶美形…
有利は一人で馬から降りられず尻を押さえながら黙っていた。
顔には冷や汗が…無理もない、「陛下!」と声をかけたこの人は、
物凄い美形なのだから。日本には…否…
どの国にもこんな綺麗な人は居ないだろう。
濃い灰色のサラリと手入れされている長い髪に潤うスミレ色の瞳…
そして、背筋が綺麗に伸び手居る長身…
「なんだろう…パーフェクトだよ。」
俺がウットリとその人に目を奪われていると、
急にキッとした顔つきになった。怒っても綺麗だ…
「コンラート、早く陛下に手をお貸しして……」
「はいはいっと。陛下、こちらに身体を傾けて、
ゆっくり降りてください、そうゆっくりと。」
またも優しく、まるで人形を扱うかの様な動作だった。
有利はやっとの事馬から降りられてほっとしている。
だがまだ顔つきはきつそうである。
それを見届け、超絶美形は俺に目をやった。
目が合った瞬間何か一瞬ブハッと何かが飛び出したようだが…
まぁ気にしないでおこう。
それも束の間でキッとまた厳しい顔つきになりコンラートに言った。
「さぁさ!あちらの方にも手をお貸しして!!」
「え!?いいです!!俺一人で降りられますから!」
「何をおっしゃいます!?落ちては危険です!!」
「…はぁ…でも俺乗馬経験ありますし、よっと…」
俺はその人の言葉を無視して、馬からヒョイッと降りて見せた。
その時の顔は不安いっぱい。乗馬経験があると言ってるのに何が不満なんだ?
第一…あんなの見せ付けられた後で…触れて欲しくない。
何子供みたいに意地張ってるんだって思われても仕方ないけど…
嫌で嫌で仕方なかったから。俺が無事に地面に降り立つのを見て、
ホッとした表情を浮かべたかと思うと直ぐに有利の方を見た。
どうやら此処では俺より有利の方がずっとずっと大切なようだ。
俺は見っとも無く焼餅を焼きながら、ただただ黙ってやり取りを眺めていた。