俺はがむしゃらに走った


有利から


コンラートから


離れられれば


どうだってよかったんだ


もっと遠くへ




















俺も㋮のつく異界人! -08-




















星と月明かりが照らす道を、俺は息を切らせながら懸命に走った。
あの小屋から弾かれた様にただただ、止まってしまうのが怖かった。
コンラートは武人だ。俺の気配なんかは直に察知して、
追いかけてきているかも知れない。それが怖かったんだ。


どれだけ走ったか、俺は何かに躓き、盛大に、それは勢いよく転んだ。
転んだ場所が落ち葉だらけだったから衝撃は全然無かったが、
矢張りそれなりには痛い。俺を引っ掛けた何かに苛立ちを覚え、
叫んでやろうと俺は後ろを振り返った。が、俺は叫ぶことが出来ず、
逆に吃驚してしまった。


「人が…倒れている?」


そう、俺は倒れている人に躓いてしまったようだ。
規則正しい寝息が聞こえてくる。辺りを見回してみると、
灰になってしまった薪があった。


「…寝ている?」


俺は、その躓いてしまった人に近づき、顔を覗き込んだ。
えらく怖い顔をして眠っているな。寝ているのなら、
もう少し安らかな寝顔が出来ないのだろうか?
…って…ん?この人何処かで見たことが有るような…無いような…
思い出せ俺!!考えに耽っていると、
急に冷やりとした物が首に衝き付けられた。
恐る恐る、その冷たいものに目をやると剣の刃だった。
どうやら眠っていた人は俺の気配に気づき、目を覚ましたようだ。
額を嫌な汗が伝っていった。


「お前…黒髪か…」

「へっ?」


剣を向けてきていた相手は剣を鞘に戻した。
俺はその行動にほっと一息ついた。少しばかり警戒しつつ、
後ろを振り向き相手と目を合わせた。
すると、相手は驚いたように目を見開いたのだ。


「お前、あの時坊主といた餓鬼か?」

「あっ!えっと、アーダ…ルベルトさんだっけ?」

「そうだ。」


確か有利の頭をフットボールのボールよろしく掴み上げ、
攻撃を与えていた気が…って、俺今ヤバイんじゃないの?
アーダルベルトが俺に攻撃をしてって事は、
つまり俺の敵でもあるという訳で…


「えっと…俺ってヤバイ?」

「そうだな。双黒がこんな時間に変装もせず、お供も居ないからな。」


あ、なんかこの人勘違いをしているよ。
そういうことを聞いているんじゃないのに。
いや、俺はさ、勘違いしてくれてる方がいいよ。めっちゃ助かるんだぜ?
攻撃されるなんてまっぴらごめんだからな。
俺が一人で考えながらうんうん頷いているとアーダルベルトが口を開いた。


「それより、一体お前は何をしているんだ?」

「それは…」


俺はアーダルベルトの質問に答えられずに口ごもり、俯いた。
コンラート達から逃げてきたなんて言っても良いものなのだろうか?
それを言ってしまえば、逃げてきた理由まで話さなくてはいけなくなる。
それ以前に俺はこの男の事が嫌いなのだ。こいつがしっかりしていないから、
ジュリアがコンラートに会い、二人は楽しそうに笑い、愛し合ってしまったのだ。
こんな嫌いなやつに話す必要の無い事だ。


「どうだって…どうだっていいじゃないか。」


俺は冷たく返事を返した。幾分経っても、アーダルベルトからの返答がない。
俺は不安になって顔を上げた。すると、そこには何か思案顔の彼の姿があった。
そして彼は顔を上げ、優しそうな顔で微笑んだのだ。俺は吃驚した。
何でこんな優しそうな顔をして笑っているんだよ。


「そうか、言いたくないのならば仕方が無いな。」

「えっ………?」


何でこんなに優しいんだよ。俺は困惑して目線を逸らしてしまった。
あんな顔をされる意味が分からなかった。
でも…


「なぁ、俺一人なんだけど…一緒に居てもいい?」

「あ?一人なのか?別に構わんが…」

「俺、貴方を利用するかも知れないよ?」

「そう思っている奴は、そんな事言わないぜ?」

「……ありがとう。」


少し気恥ずかしくなった俺はそっぽを向いて顔を赤らめた。
正面なんて向いていられなかった。胸の鼓動がドクドクと煩い。
あれだ…きっと吊橋効果だ。別に怖いわけじゃないけど、
心細くて、傷ついているからだ…きっとそうなんだ。


アーダルベルトがもう一眠りすると身体を横にした。
どうすれば良いのか分からず、オドオドしている俺を見て、ため息をついた。


「はぁ、お前、何してるんだ?」

「べっ…別に?それにお前じゃない!!」

だろ?いいからこっちへ来い。」


何をするのかと身構えたけど、オドオドと近づく俺の手を乱暴にとり、
自らの横に寝かしつけた。最初はドキドキしていたんだけど、
アーダルベルトの逞しくて、暖かい腕の中が気持ちよくて、
俺は深い眠りの中へと堕ちていった。


不安で悲しい気持ちと共に。





後書き

アーダルベルトと絡み…この人結構好きかも知れないのです(笑
学校でせっせと書いていたので文書が変かも(いつもの事だろ!

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素材:10minutes+