目が覚めると身体が温かくて
親に守られているような
そんな安心感溢れる感じがする
一人じゃない事の嬉しさ
多分それだけの事なんだけど…
今の俺には必要なことだった
俺も㋮のつく異界人! -09-
「おい!さっさと起きないかっ!」
俺はアーダルベルトの乱暴な朝の挨拶により目が覚めた。
心地の良い腕の中でそっと目を開けると、顔がすぐ近くにあった。
俺は吃驚して飛び起き、アーダルベルトと少し距離を取った。
どうも俺は眠っている間にアーダルベルトに抱きつき、
先に目覚めたアーダルベルトは、どうやっても離れない俺に、
堪忍袋の緒が切れ、怒鳴ったようだ…ごめんなさい…
でもね…もう少し優しく起こして欲しかったな…
「うぅ…耳が痛い…」
「何度呼んでも起きないお前が悪い!」
「うぅーアーダルベルトの鬼ぃー!!」
「ははーん…そんな事言っていいんだな?
俺はお前を置いていく事だって出来るんだがな…」
「え…ちょ…嫌だ!!一人にしないでよっ!!」
「オイオイ、何もそんな顔するこたーないだろ。」
「え…」
何故か自分でも分からないうちに、俺はアーダルベルトの腕にしがみ付き、
驚くほどの泣きそうな声で縋っていた。一人にされるのが怖くて…
別に一人で居ることなんて、俺にとってはどうでもない事の筈だった。
なのに今はこんなにも一人になる事を恐れてしまっている…
寂しいと思ってしまう…一体どうして…考えるまでもないか…
きっと有利が俺を変えてしまったんだ…ほんの少しの時間だったのに…
というか、此処に着てからの俺は少し変だ…自分で言うのもなんだけど…
まだ一日しか経っていないと言うのに…知らなかった事がどんどん溢れてくる。
次から次へと思い出のように、まるで最初から俺の頭にあるかのように。
此処に来る前は、コンラートの名前さえ知らなかったのに…
なのに、次々に俺の前世の名や、ジュリアの名前までもが浮かんできた。
コンラートの名前がすっと浮かび上がってきたのと同じように…
どうしてだろう…今まで閉まってた蓋が開いたみたい…
どんどん どんどん 泉みたいに溢れ出て止まらないんだ…
「どうしたんだ?」
「……なんでもない……」
「何でもないこたないだろ…顔色悪いぞ。」
「だから何でもないってば…」
優しくしてくれるアーダルベルトには悪いけど、本当に何でもない。
色々考え出したらちょっと気分が悪くなっただけだし…
このくらいの事で根を上げるなんて男じゃない。我慢できる。
ていうか、今優しくされちゃったら本当にヤバイんだけどな…色々と…
寂しい時に優しくされちゃうとほ…ほ…ほ ほ ほ…惚れちゃうかも…
…ないか…だって俺アーダルベルトの事好きじゃないもん。
でも…なんか以外に優しいから、少しだけ見直したかな?
ってだからソレが駄目なんじゃん!!!
「何だ、さっきから百面相して…変な奴だ。」
「傷つきやすい青少年に変とか言わない!!」
「そりゃ悪かったな。百面相してるとこ悪いが、そろそろ行くぞ。」
「は?どっか行くの??」
俺が言うとアーダルベルトは呆れた顔でため息をついた。
いや…確かにね…此処でずっとじっとしてても駄目なんだけどな。
でもな、そこまで呆れられるとさ…なんか悲しくなっちゃうじゃん?
もう前言撤回…こいつ全然優しくなんかないよ。
俺を馬鹿にして笑ってんだぜ…俺は傷つきやすい青少年…
いやぁ〜そんなキャラじゃないかな〜。
「俺は行くところがあるんだ。さっさと馬に乗れ。」
「あ、はい…馬鹿で悪かったな。」
「馬鹿なんて一言も言ってないぞ?被害妄想の激しいやつだ。」
「あ゛ー!!さっきから酷い事ばっか言いやがってー!」
なんでこんなに普通に会話出来てるんだろう?
俺本当はアーダルベルトの事嫌いじゃないんじゃないの?
いや…だって…こいつの所為って思う気持ちもあるけどさ…
なんか昔から知ってるからなのか話せるのが凄く嬉しくて…
ん?アレ?嬉しい?何で?いやいやいやいや!!!
多分…エレナーデとアーダルベルトもこんな感じだったんだろうな。
だって本当に懐かしい感じがするし。温かいからさ…
いいじゃないか、なんだって。今楽しければそれでさ…
「ははっ。」
「何だ急に笑いだして。」
「教えな〜い。」
「気持ち悪いやつだ。」
「だから酷いってソレ!!」
俺とアーダルベルトはケタケタと笑いながら、
木々が生い茂る道とは呼べない道を進んでいった。
+++++
村の周辺にたどり着いた俺たちは今日も野宿するために、
馬を木に繋ぎ、焚火をする為の薪を拾っていた。
村があるんだから、どっか泊めてもらえる所探せばいいのに…
なんで野宿なんだよ!!!二日も野宿かよ!!!あ〜あ…
今頃有利はフッカフッカのベッドで休んでるんだろうな…
羨ましいぜ!!あ、なんか腹立ってきた。俺が逃げたからな…
俺が悪いんだけどな。くそー!!どうせ有利とコンラート笑ってるよ。
楽しそうに笑ってるんだよ!!俺もコンラートと笑いたいな。
隣に…いっつも隣に居たいのにさ…なんでこんな所に居るんだろ。
いや、俺が逃げたんだけどな…頭の中ゴチャゴチャするな。
「コンラートに会いたい……」
俺の口からポロリと溢れてしまった言葉は、
憎いほど綺麗な星が浮かぶ夜空に消えていった。
有利と一緒に居たくないから飛び出してきたけど、
コンラートに会えない事がこんなに悲しいと思わなかった。
こっちに来る前は毎日夢の中で一緒に笑ってたから気づかなかった。
別に俺が笑ってる訳じゃないんだけど…どうもこっちに着てからは、
こっちの世界の夢も見ないし…好きな人に会えないと辛い。
って…なんでこんなに女々しい事考えてるんだよ!!
駄目駄目!!俺こんなキャラじゃない!!元気爽やかキャラだよ!!
「―っ…んだよ!!止まれよっ!」
いつの間にか俺は泣いていて、薪にポタポタと涙が零れていた。
本当俺おかしいよ。向こうの世界じゃ有利に会うまで一人だったじゃん。
なんでコンラートに会えないくらいで此処まで泣けるんだよ。
こんなんになっちまうんだよ…止まれって!
何で止まらないんだよ!!!
「うっ…」
「おいどうし……」
「…なんでも…っ…ない…」
「はぁ…お前ソレばっかだな。少しは信用したらどうだ。」
「何が…ひっく…う…」
「一人で抱え込んでねーで俺に言ってみろよ。」
「うっ…煩い!!向こう行けよ!っ…ほっと―っうわ!」
気づいたら俺は又してもアーダルベルトの逞しい腕に抱えられていた。
急に腕を思いっきり引っ張られたから痛いんですけど…
あーなんでこいつの腕の中ってこんなに安心出来るんだろう?
本当謎だな。やっぱ俺こいつ嫌いじゃないや。
嫌いだったらこんなに安心出来ないって、うん。嫌いじゃない。
俺はアーダルベルトの行為に甘えて、ちょっとの間泣いた。
我慢してたから結構な量な涙が出た。泣くって疲れるけど、
溜め込んでたものが流れていくようで気持ちが良かった。
落ち着いたらアーダルベルトに話してもいいかな。
吃驚するかな…俺がエレナーデだよって言ったらさ。
コンラートはどんな表情するのかな…
ねぇ…早く気づいてよ。
俺を追いかけてきてよ。