もう見たくないんだ


人が戦って傷つくのも


親を失って泣く子供の姿も


それでも戦いは終わらない


なんてこの世は無情で


醜いんだろうか




















俺も㋮のつく異界人! -12-




















俺は今馬の上に居た。アーダルベルトと相乗りなのだが、
俺達はさっきから一言も言葉を交わしてはいない。
先ほど居た村から大分離れたと思うのだが、その間一言もだ。
何故なら俺は、俺の目の前で戦いが起こるかもしれないという不安で、
緊張して声が出ないのだ。声を出すとまた泣いてしまうかもしれない。
そうなるとこの優しいアーダルベルトに又心配を掛けてしまう。
それは嫌だったから…


俺達一行が魔族の土地に住む人間の村に付いたのは、
昼もまだ過ぎていない時刻だった。
どうやら俺とアーダルベルトはそうとう早起きしていたらしい。
俺の気持ちは最奥まで沈みきったまま、村人達は攻撃を仕掛けた。
アーダルベルトはただ見ているだけで戦わず、何かを探しているように見える。
一体何を?と思ったが、声を掛けることもせずその恐ろしい状況を見ていた。
目を瞑って、耳を塞いで、どこかに閉じこもってしまいたかったのに…


だってこんな戦いテレビの中でしか知らないんだ。


テレビでさえこんな鮮明な映像は写しはしない。


吐き気がする…誰か…止めて…


そう思うと急に頭の中に声が響いたような気がした。
その声は酷く優しくて、この場にそぐわないような気がした。
天使の声だと表しても過言ではない程甘くて誘惑的だった。
そこで俺の意識は完全にブラックアウトした。
アーダルベルトの心配する声が聞こえたような気がしたけど、
その声もあの天使の音色にかき消されてしまった。
酷く甘く聞きなれたその声に…


『眠って…大丈夫、きっと貴方を助けにあの人が来るから…』





+++++





気が付くと俺は真っ白な世界に居た。


どこまでも どこまでも白い世界だった。


音もしないし、温度だって感じない。


立っているのか、それとも浮いているのかも分からない。


全てが現実離れをしているような世界だった。


ここは何処かと考えたその時、ふと声がした。


それは先ほど聞こえた甘い音で、良く知る声だった。




「エレナーデさん?」

『えぇ、そうよ。初めましてと言うべきでしょうか…』

「え…あ…はい。」


俺は凄く緊張していた。だってこの人は俺の前世の魂の持ち主で…


普通なら会話なんて出来るものじゃないし。何より美人だしさ…


でも同時に安堵感を覚えた。優しく花が咲くような笑顔と、優しい音色に…




『大丈夫よ。そんなに怖がらないで。直ぐに戦いも終わるわ。』

「それどういうことですか?」

『あの人がきっと来てくれるわ。』

「あの人って?ねぇ…待って!行かないで!!」



あの人が来る。そうとだけ言い残して白の世界は崩壊した。


そんなもの最初からなかったかのように。


先ほどの時間は嘘だとでもいうように。


でもエレナーデさんは優しく、嬉しそうに笑っていた。


それは嘘じゃない。きっと大丈夫だ。この戦いもきっと終りがあるから。







+++++





目覚めるとそこには見知らぬ景色が広がっていた。
何か夢を見たような気もするのだが、どうも頭がハッキリしない。
覚えていないということは案外どうでもいいような夢だったのだろう。
俺は頭を振って周りを見回した。天井は低くて木の板の隙間から空が見える。
周りには藁のようなものが敷き詰められていて、何やら肥料の臭いが…
ほんの少し薄暗くて、慣れていなかった視界が、時間と共に鮮明になった。
どうやらここは小屋のようだ。しかも家畜用の…だって…ね???
そこまで考えるとふと別の鼻を突く臭いが漂ってきた。


「焦げ臭い…」


よく耳を済ませるとパチパチと物が焼ける音がする。
それに少しばかりか熱い気がする。
気づかなかったのに、気づいた瞬間怖くなる。
これは人の心理だししょうがない…じゃなくてだなぁ!!!!
何冷静に分析してるんだ俺!この小屋は燃えているんだ!戦争だから…?
だとしたらアーダルベルトは何処に行ったんだ?
俺を置いて?…そんな筈はない。
だって置いていくとか言いながら、俺を置いていったことはない。
もしかしたら、戦うのに俺が邪魔になったから少し寝かせておいたとか…
そうに違いない。だってこんなところに一人…


「嫌…だ…死にたくないよ…」


逃げ出そうとしたが、どうにも身体の自由が利かないので手首を見てみた。
なんか…紐で手首を縛られているんですが?それだけじゃない!
自由を奪うかのように様々な場所を縛られているよ俺!!どうして…?
どうしてこんな…


「死にたくない…誰か…誰か!!」


そう強く叫んだ瞬間一筋の風が俺の頬を撫でた。
まるで安心しろとでもいうように。
でもその風は直ぐに何処かへ行ってしまったようだ。
もしかしたら助けを呼びに俺の声を届けてくれるのかも知れない。
何故か分からないけどそんな気がしたんだ。





後書き

結構意味分からない(毎度のこと)次はコンラートか有利視点で話が進む…はず。
予定は予定であって未定でしかないんですよ(苦笑

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