俺を蔑む声がする
“ウラギリモノ”と
裏切ったわけじゃない
ただ逃げたかっただけなんだ
今更遅いのかな?
戻りたい・・・なんて
俺も㋮のつく異界人! -14-
気絶したを、先に帰還した有利が待つ血盟城へと連れ帰ったコンラート。
急いで愛馬から降り立ち、を治癒魔力を持つギーゼラの元へと連れて行く。
移動する間も魘され、苦しんでいるにコンラートは気が気ではなかった。
実際は数分の短い道のりも今のコンラートには何時間もかかる長い道に思えた。
やっとの思いでギーゼラの部屋へと辿り着き、ノックをすることも忘れ扉を開けた。
行き成りの侵入者にギーゼラは何事かと扉へと振り向いた。
「ギーゼラ!この子を今すぐ見てやってくれ!」
「ウェラー卿?如何なさったのです?」
「頼む!急いでくれ!」
「これは・・・分かりました。ウェラー卿、先ずは落ち着いてください。」
「あ・・・あぁ。」
何故このようになったのか分からなければ治療の仕様もありません。
と優しく微笑みかけるギーゼラに取り乱していたコンラートは深呼吸をした。
確かに何がどうなってこうなったのか、原因が分からなければ対処が出来ない。
何故此処まで取り乱しているのかコンラート本人は気づいてはいない。
コンラートは何故が気絶したのか、事の次第を話した。
話し終わるとギーゼラは分かりましたと一言治癒を開始した。
額に汗を浮かべるにコンラートは消えない焦りを感じた。
数刻し治癒が終わったのか、ギーゼラは笑顔でコンラートへと振り向いた。
その笑顔を見たコンラートは今度こそ安堵した表情で深い息を吐き出した。
「これでもう大丈夫です。あとは安静に寝かせてあげてくださいね。」
「あぁ、すまない。」
「それにしてもこの方は何方なのですか?
陛下以外にも双黒の者がいらっしゃるとは。」
「それについては又話し合いの場が設けられるだろう。」
簡潔に応えたコンラートにギーゼラはクスリと笑い声を洩らした。
それに不思議そうに首を傾げたコンラートに彼女は更に笑いを洩らす。
一体なんだと言うのか分かりかねるコンラートにギーゼラは優しく言った。
「この方が大切なのですねウェラー卿。貴方がそこまで取り乱すなんて珍しい。」
「俺はそこまで取り乱していましたか?」
「ふふ、自分でもお気づきになっていないのですね。」
「・・・・・・」
「彼が眼を覚ますまで付いて居て上げてくださいね。
それでは私は失礼致します。」
ギーゼラは一礼すると自室から退室していった。
一体何処へ行くというのであろうか。が目覚めるまで、
彼を移動させることも出来ない為に彼女には迷惑をかけてしまった。
申し訳ないと思いはするものの、今は一刻も早く、
彼が目覚めてくれることを祈るばかりである。
もう安心だと言われたとは言え、の額にはまだ汗が輝いている。
コンラートはその汗を拭いながら彼の眼覚めを待った。
+++++
眼を覚ますとそこは白い世界だった。
何もない。本当に何も。
見回せど続く白に俺死んだのかな?なんて思いが過ぎる。
膝を抱えて丸くなった俺に声が降り注いだ。
―――裏切リ者―――
―――何シニ戻ッタ―――
―――オ前ハモウ要ラナイ―――
―――居ナクナッテシマエバイイ―――
嫌だ・・・聞きたくない!違うんだ!!!
聞いてくれ!!ただ・・・ただ・・・逃げたかっただけなんだ・・・
本当に・・・本当に裏切るつもりなんて・・・一つも・・・
―――ソンナ言イ訳知ラナイ―――
―――消エテシマエ―――
―――魔王モ・・・ソウ思ッテイル―――
え?そうなの?ねぇ・・・有利?俺はもう・・・
許してはもらえないの?俺・・・要らないの?
ねぇ・・・誰か・・・ねぇ!!
+++++
を看病しているうちに、疲れていたのか眠ってしまっていたコンラート。
突然聞こえた叫び声に何事かと飛び起き、周りを見回した。
叫んでいるのは気絶していたはずので、可哀想なくらいに怯えている。
一体何があったというのか・・・
「ふっ・・・いやっ・・・ごめんなさいっ・・・うっ・・・」
「!?!?落ち着いて!!」
肩を掴み揺さぶるコンラートの声はには届いておらず焦点が合っていない。
強引ではあるが肩を握る手に力を込めると、
ビクッと体を大きく震わせコンラートの手に眼をやる。
その手から目線は腕を辿りその持ち主であるコンラートの眼下へと上げられた。
そしてコンラートと眼が合ったの眼は次の瞬間には大きく見開かれて、
落ち着きを見せるどころか更にその震えを増し、怯えの色を強めた。
「嫌ぁぁぁっ!!ごめっ・・・ごめんなさいっ!!!」
肩を掴むコンラートの手を拒むかのように腕を振り回す。
だが所詮軍人であるコンラートの力に敵うはずもなく、あっけなく拘束される。
その行動に更に瞳孔を見開きは泣き叫んでいる。
一体どうすれば彼を落ち着かせることが出来るのであろうか?
こんなに可哀想なぐらい震えているこの少年を。
「?大丈夫。誰も貴方を責めやしませんよ。」
「ごめっ・・・なさっ・・・ふっ・・・」
「大丈夫。」
有りっ丈の思いを込めて優しく優しくを包み込むコンラート。
人の体温に安心したのかの震えは少しずつではあるが収まってきていた。
それに安心したコンラートは大丈夫と何度も繰り返しながら彼の背を撫でた。
早く黒い影がこの少年から消えてくれればいい。怯えた眼でなく、
もう一度あの笑顔を向けてほしい。笑ってくれるだけでいい。それだけで・・・
「?落ち着きましたか?」
「コン・・・ラート??」
「えぇ、何があったか話して頂けますか?」
「謝らなきゃ・・・有利に・・・裏切ってごめんって・・・」
「裏切った?誰もそんな事思っていやしませんよ?」
「うぅん・・・俺は裏切った・・・だから・・・だから・・・」
又も顔を覆い泣き出したの頬にコンラートは優しく手を触れさせた。
一度大きく震えただが、顔を上げコンラートの瞳を見やる。
コンラートは優しく微笑むと涙を拭い瞼に唇を落とした。
何故そうしたのか分からないが、目の前の顔は真っ赤に染まっている。
「さぁもう少しゆっくりと身体を休めてください。此処に居ますから。」
優しくをベッドへと寝かせこみ、彼が眠るまでの間頭を撫で付けた。
もうこの小さな存在が怖い夢に魘されることのないようにと願いを込めながら。