穏やかに偉大なる航路を進むモビーディック。


いつもと変わらない日々を迎える筈だったその日、


空から一羽の鳥が姿を見せた。



恋焦がれ-1-





朦朧とする意識の中で、憎たらしいまでに晴れ渡った空を進んでいた。
何故意識が朦朧としているのかと問われれば理由は簡単だった。
私は無謀にも、偉大なる航路を一人小舟で旅をしていたのだ。
最初は気分良く進んでいたのだが、先日大嵐に遭遇し、小舟は大破してしまった。
なんだかやれそうな気がすると、島を飛び出した私が馬鹿だったようだ。
お陰で晴れ渡る海をもう何日も空中遊泳を続けているのである。

「暑い・・・疲れた・・・死ぬ・・・」

何故人である私が空を自由に飛べているのか説明しよう。
私はあの有名な悪魔の実を食べた悪魔の実の能力者なのだ。
トリトリの実と呼ばれるそれを食べた私は鳥人間となった。
ご存知かも知れないがあの実本当に不味いんですよ!
この世の食べ物とは思えないぐらい・・・
あんなに不味いと知っていれば私はあんな物口にはしなかった。
でも馬鹿な私はあんなに不味そうな形をしているのに「美味しそう!」
だなんて口に運んでしまったのだ。あれが人生の間違いだった。

そして気分を良くした私はちょっと修行なんかしちゃって海に出たのだ。
あの時はそう・・・何でも出来るとか勘違いしてしまったんだ。
神様ごめんなさい。もう調子に乗りませんのでどうか許してください!
なんて願ってみたところで祈りが通じるはずもなく・・・

「通じちゃったよ・・・」

疲れきった私は幻を見ているのであろうか?
今はまだ小さいが船が見えるではないか。うん私付いてる。神様ありがとう!
私は最後の力を振り絞って船に近づいた。どうやら海賊船のようだ。
ここは偉大なる航路なのだ。海賊船なんて珍しくもないだろう。
もし悪い海賊団だったらどうしようとか考えてみるけど仕方ない。
今はこの船に縋るしかないのだ。あれ、視界が霞んできた。ヤバいよ・・・

「うっ・・・」

私は立派なジョリー・ロジャーのマークを確認出来ずに体から力が抜けた。
駄目だもうこれ以上飛べないよ。このまま甲板に激突して死ぬんだ。
私の人生短かったな。お父さん、お母さん馬鹿な私を産んでくれてありがとう。
なんて馬鹿な事思いながら気を失ってしまった。
気を失う前になんだか温かい物に触れた気がしたけどきっと気のせい。



+++++



白ひげ海賊団一番隊隊長不死鳥のマルコは空を仰いだ。
澄み渡る青い空、四皇に名を馳せる白ひげ海賊団に挑む馬鹿もおらず平穏な日だった。
少々退屈ではあったが、今日も一日このまま終われば良いと思った矢先の事だ。

少し前から見えていた鳥が上空通過手前に迫っていた。とても綺麗な鳥。
よくよく見てみるとなんだかとても弱っているようで懸命に羽ばたいている。
モビーディック上空へと差し掛かった鳥はただの紅ではなく炎を纏っていた。

「綺麗だよい・・・」

マルコはその鳥に見とれ、このまま通り過ぎて行くとんだろうと思っていた。
だが、予想とは裏腹に力をなくした鳥は急に羽ばたきを止めた。
重力に逆らうことなくモビーディック甲板に吸い込まれようとする鳥。
炎を纏っている以上、火災が起こってもおかしくはない。
折角の平穏な一日を台無しにされてはたまったもんじゃない。
ボボッと獣型に姿を変え、大空へと力強く羽ばたいた。
落下してくる鳥を受け止めようと羽根を大きく開いた瞬間だった。
紅い鳥はみるみるうちに、鳥から人間の女へと姿を変えたではないか。

「!?能力者かよいっ!!」

マルコは慌てて獣人型を取り、両手で女を受け止めた。
見たところ20代半ばで、華奢な身体つきをしているが、出る所は出ていた。
そんな場所に目を奪われる自分を叱咤したくなったが仕方がない。
何分航海の途中は女に不自由しているのだ。そして何よりこの女は美しい。

先程の鳥を連想させるような燃えるような紅い髪。
前髪は綺麗に切り揃えられており、頂上には大きな団子。
この量からして相当髪が長いであろう事が想像できる。
色白で顔の作りもよろしく小顔で、閉じられた瞼には睫毛がびっしりだ。
唇もまるで誘っているかのようにぷるぷるのピンク色だ。

それにしても露出が多い服だ。ビキニを連想させるリボン状の服。
立派なくびれと胸をさらけ出している。更に下は短パンで太ももも露出されている。

「隠れなさ過ぎだよい・・・」

目のやり場に困る女から目を逸らし、取り敢えず降下することにする。
先ほどからなんだか甲板が騒がしいから、甲板には人が多いだろう。
なんでこんな偉大なる航路真っ只中を女が一人彷徨っていたのだろう。
不思議に思いつつも、降り立った甲板にはやっぱり人だかりが出来ていた。
ナース以外の女を珍しそうに見ている船員達。そこに古株サッチが声を掛けてきた。

「よぉマルコ!なんだそいつぁ?」

「空から落ちて来てねぃ」

「そうか、まぁとりあえずオヤジに報告して来るからお前医務室連れてってやれや」

「分かってるよい」

しかめっ面で返事を返したマルコに、サッチはひらりと手を振り船長室へと消えた。
マルコはひとつため息をこぼし、女を医務室へと運んだ。





後書き

マルコが愛おしすぎてやってしまった。
しかも女主。ごめんなさい。なんでBLじゃないんだ!?って…
良いじゃないかそんなことは!私には野望があるんだ!
マルコと甘い甘い恋をしましょう★

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素材:戦場に猫