過去の記憶

















ずっとずっと昔の話。
僕が生まれるよりももっと昔。
そして地球上ではない、他の地でのお話だ。


そこは血と熱とに塗れた世界だった。
良い事なんて一つもなくて、そこに住む者は飢えていた。
食べることも、寝ることも儘ならない最悪な場所だ。
ヒトがヒトを喰らう事も多かった。だって食べ物がないから。


いつものようにフラフラと道なき道を進んでいた。
目を潤すような景色なんてなくて、死骸が転がっている。
何処を見ても アカ アカ アカ 血の色しかない。


下を向いて歩いていた僕だけど、ふと呼ばれた気がした。
名前なんて誰も知らないはずなのに。僕だって知らない。
此処では名前なんて必要なかったから。


「     」


もう一度名前を呼ばれた気がした。間違いじゃない。
目線を上げると、そこにはこの世界ではあり得ないような美があった。
血のように赤い目に、見たこともない綺麗な青の目。
どうして違う色の目をその瞳に宿すのだろうと思った。
でもそんな事どうでも良かったのかもしれない。


魅入られる…


僕はこの瞳を見た瞬間に囚われてしまったのだ。
この妖しくも美しい人物に。


「ねぇ、僕の事呼んだの?」

「えぇ、珍しく純白な者を見つけましたのでね。」

「純白?僕が?何をありえない事を…」

「いいえ、貴方は純白です。黒い純白。」

「意味が分からない。」

「僕もです。この世界に失望しているのでしょう?」

「そうだね。ここはとても耐えられる世界じゃない。」


僕は綺麗な者から目線をはずし、真っ赤な空を見上げた。
赤意外に染まる色を知らない赤い赤い空を。


「ここから出たいですか?」

「出来ないよそんな事。」


出来ないって分かってた。分かってたけど声があまりに美しくて…
その妖しさがどこまでも輝いて見えて…
僕はもう一度その人を見た。綺麗に綺麗に微笑んでいた。
でもその微笑みはとても怖いものに見えた。


「出来ますよ。いつか僕の為に生きると誓うのなら。」

「君の為に?」

「そう、僕の為に。」


何を言っているのか分からなかった。でもこの人と一緒なら…
いいかも知れない。それにこんな赤いだけの世界を生きていても意味がない。
そう、僕の返事は最初から決まっていたんだ。


「いいよ。」

「クフフ、それではまた会える事を楽しみにしています。」


グサッ――――


鈍い音がした。僕のお腹のあたり。温かい何かが広がっていく。


あぁ、僕死ぬんだ―


でも…怖くない。そうだ、死ぬ前に…聞かなきゃ―


「ねぇ…名前…僕の名前と…君の名前を教えて。」

「貴方の名前は貴方しか知りません。僕の名は六道…六道骸です。」

「骸…そう、綺麗な名前だ。」

「おや?眠いのですか?眠ってください。何年も、何百年も。」

「今度目を覚ましたら…骸が目の前に…い…る……」


そこで僕の意識はなくなってしまった。温かい闇の中へ。





+++++





「目が覚めましたか?」

「あっ…む…くろ?」

「えぇ僕ですよ。どうかしたのですか?」

「夢…夢を見たんだ。」

「クフフどんな夢ですか?」

「約束…約束をした夢。」

「その約束は今どうなっていますか?」

「んっ、ヒミツだよ。」

「おや?意地悪ですね。」

「そう…教えない。」


だって骸はきっと覚えてるから。ずっと昔交わした約束を。
今僕は幸せな世界で骸と共に生きている。果たされた約束。
僕は一生涯この人から逃れることが出来ないんだ。
でも構わない。


僕はこの人のこと


どんな世界でも


どんな時代でも


変わらずアイシテルから―――





後書き

これ長編の骸夢書く前の話だと思うのですが・・・なかそれの番外編っぽい。
名前変換ないけど、きっと夢小説・・・

素材:TR002.